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証拠金取引の仕組みとロスカットが起きる条件

証拠金取引の仕組みとロスカットが起きる条件

FXは、取引金額の全額を用意するのではなく、一定額の「証拠金」を預けて通貨を売買する証拠金取引です。

少ない資金で大きな金額を取引できる一方、取引金額に対して損益が発生するため、相場が予想と反対方向へ動いた場合には、預けた資金の大部分を短時間で失う可能性があります。

損失が一定水準まで拡大すると、FX業者によって保有ポジションが強制的に決済されます。これが「ロスカット」です。

この記事では、証拠金取引の基本的な仕組み、必要証拠金や証拠金維持率の計算方法、ロスカットが起きる具体的な条件について解説します。

目次

証拠金取引とは

証拠金取引とは、FX業者に一定額の資金を預け、その資金を担保として、預けた金額よりも大きな取引を行う仕組みです。

たとえば、1米ドル=150円のときに1万米ドルを取引する場合、実際の取引金額は次のようになります。

150円×1万米ドル=150万円

現物で1万米ドルを購入する場合は、原則として150万円が必要です。

一方、FXでは、取引金額の一部を証拠金として預けることで、150万円分の取引を行えます。

日本国内の個人向け店頭FXでは、取引金額の4%以上の証拠金を預ける必要があります。レバレッジに換算すると、上限は25倍です。

この場合の必要証拠金は、次のように計算できます。

150万円×4%=6万円

したがって、1米ドル=150円のときに1万米ドルを取引するには、最低でも約6万円の証拠金が必要です。

ただし、6万円だけを入金して取引を始めると、わずかな値動きで証拠金不足やロスカットが発生する可能性があります。必要証拠金は、あくまでポジションを保有するために必要な最低水準であり、安全に取引できる資金額を意味するものではありません。

レバレッジが高いほど損益が大きくなるわけではない

FXでは「レバレッジ25倍」「最大レバレッジ1,000倍」などと表示されますが、レバレッジそのものが損益額を決めるわけではありません。

損益額を決めるのは、実際に保有しているポジションの数量です。

たとえば、米ドル/円を1万米ドル保有している場合、為替レートが1円動いたときの損益は、おおむね次のようになります。

1円×1万米ドル=1万円

国内FXで取引しても海外FXで取引しても、同じ1万米ドルのポジションであれば、1円の値動きによって発生する損益は基本的に同じです。

最大レバレッジが高い口座では、同じポジションをより少ない必要証拠金で保有できます。しかし、必要証拠金が少ないからといって、取引のリスクまで小さくなるわけではありません。

取引の実態を把握するには、口座に設定された最大レバレッジではなく、次の「実効レバレッジ」を確認することが重要です。

実効レバレッジ=保有ポジションの取引金額÷口座の純資産額

たとえば、純資産10万円の口座で150万円分のポジションを保有している場合、実効レバレッジは15倍です。

150万円÷10万円=15倍

最大レバレッジが1,000倍の口座であっても、この取引の実効レバレッジは15倍となります。

FX口座で使われる主な証拠金用語

ロスカットの条件を理解するには、口座画面に表示される用語の意味を把握しておく必要があります。

口座残高

決済済みの損益が反映された口座内の資金です。

保有ポジションに含み益や含み損が発生していても、ポジションを決済するまでは、通常は口座残高そのものには反映されません。

評価損益

現在保有しているポジションを、その時点の為替レートで決済したと仮定した場合の損益です。

まだ確定していないため、含み益または含み損とも呼ばれます。

純資産・有効証拠金

口座残高に、保有ポジションの評価損益やスワップポイントなどを加減した金額です。

一般的には、次のような考え方で計算されます。

純資産=口座残高+評価損益±スワップポイント-手数料等

実際の名称や計算対象はFX業者によって異なる場合があります。

必要証拠金

現在のポジションを保有するために必要な証拠金です。

基本的な計算方法は次のとおりです。

必要証拠金=取引金額÷レバレッジ

または、

必要証拠金=取引金額×証拠金率

日本国内の個人向け店頭FXでは、原則として取引金額の4%以上が必要です。

余剰証拠金・利用可能証拠金

純資産から必要証拠金を差し引いた金額です。

余剰証拠金=純資産-必要証拠金

余剰証拠金が多いほど、相場が不利な方向に動いた場合に耐えられる余力があります。

ただし、余剰証拠金が表示されていても、それをすべて新規取引に使うと、口座全体のロスカットリスクが高くなります。

証拠金維持率

純資産が必要証拠金に対してどの程度残っているかを示す数値です。

一般的には、次の式で計算されます。

証拠金維持率=純資産÷必要証拠金×100

ロスカットの判定では、この証拠金維持率が重要になります。

ロスカットとは

ロスカットとは、保有ポジションの損失が一定水準まで拡大したときに、FX業者がポジションの全部または一部を強制的に決済する仕組みです。

日本国内で個人向けFXを取り扱う金融商品取引業者には、投資者の損失拡大を防ぐため、ロスカットルールを定めて運用することが求められています。

ロスカットは投資家の資金を完全に守る制度ではありません。損失が無制限に拡大する可能性を低くするための安全装置と考える必要があります。

ロスカットが起きる基本的な条件

一般的には、証拠金維持率がFX業者の定めるロスカット水準を下回ると、ロスカットが執行されます。

証拠金維持率≦FX業者が定めるロスカット水準

たとえば、ロスカット水準が証拠金維持率100%に設定されている口座では、純資産と必要証拠金が同額になった時点がロスカットの目安になります。

ロスカット水準が50%の場合は、純資産が必要証拠金の半分まで減少した時点が目安です。

ただし、ロスカット水準はすべてのFX業者で共通ではありません。

国内FXと海外FXで異なるだけでなく、同じFX業者でも口座の種類や商品によって異なる場合があります。ロスカットの水準、判定方法、判定間隔、決済されるポジションの順序などは、必ず契約締結前交付書面や取引条件で確認する必要があります。

計算例:証拠金維持率100%でロスカットされる場合

次の条件で米ドル/円を買ったとします。

項目条件
口座資金10万円
取引レート1米ドル=150円
取引数量1万米ドル
取引金額150万円
必要証拠金6万円
ロスカット水準証拠金維持率100%

取引開始時点では評価損益がないため、純資産は10万円です。

10万円÷6万円×100=約166.7%

取引開始時の証拠金維持率は、約166.7%となります。

米ドル/円が1円下落すると、1万米ドルの買いポジションには約1万円の含み損が発生します。

1米ドル=149円になった場合

含み損は約1万円です。

純資産:10万円-1万円=9万円

必要証拠金を6万円として単純化すると、証拠金維持率は次のようになります。

9万円÷6万円×100=150%

この時点では、証拠金維持率100%を上回っています。

1米ドル=146円になった場合

含み損は約4万円です。

純資産:10万円-4万円=6万円

証拠金維持率は次のようになります。

6万円÷6万円×100=100%

ロスカット水準が100%の場合、この付近がロスカットの目安となります。

ただし、実際の必要証拠金は現在の為替レートに応じて変化する場合があります。また、スプレッド、スワップポイント、取引手数料、ロスカットの判定間隔なども影響するため、実際のロスカットレートとは異なることがあります。

ロスカット水準が50%の場合

同じ取引条件でロスカット水準が50%の場合、純資産が必要証拠金の50%まで減少した時点が目安です。

必要証拠金を6万円として単純化すると、ロスカットの目安となる純資産は3万円です。

6万円×50%=3万円

口座資金が10万円であるため、約7万円の含み損が発生すると、純資産は3万円になります。

米ドル/円を1万米ドル保有している場合、約7円の下落に相当するため、単純計算では1米ドル=143円付近が目安です。

ただし、ロスカット水準が低いことを「安全」と考えるのは適切ではありません。

ロスカット水準が低い口座では、強制決済までの値幅が広くなる一方、ロスカットが執行された時点で、口座資金の大部分を失っている可能性があります。

ロスカットと追加証拠金は異なる

ロスカットと追加証拠金は、どちらも証拠金不足に関係しますが、同じ制度ではありません。

追加証拠金とは、一定の判定時刻において証拠金が必要水準を下回った場合に、不足額の入金やポジションの決済を求められる仕組みです。「追証」と呼ばれることもあります。

日本国内の個人向けFXでは、新規建玉時だけでなく、営業日ごとにFX業者が定める時刻においても、原則として取引金額の4%以上の証拠金を維持する必要があります。

一方、ロスカットは、相場変動によってFX業者の定める基準に達したときに、保有ポジションが強制的に決済される仕組みです。

追加証拠金の入金期限を待っている間でも、相場がさらに不利な方向へ動き、ロスカット水準に達した場合には、ロスカットが優先して執行されることがあります。

海外FXでは、「マージンコール」が証拠金維持率の低下を知らせる警告、「ストップアウト」が強制決済を意味することがあります。ただし、用語の定義は業者ごとに異なるため、名称だけで判断してはいけません。

ロスカットされるのは全ポジションとは限らない

ロスカットが執行されたときに、すべてのポジションが一括で決済されるのか、一部のポジションだけが決済されるのかは、FX業者のルールによって異なります。

主な方法として、次のようなものがあります。

  • 保有ポジションをすべて一括で決済する
  • 含み損の大きいポジションから順番に決済する
  • 必要証拠金の大きいポジションから決済する
  • 証拠金維持率が一定水準まで回復するまで一部を決済する

複数の通貨ペアを保有している場合、あるポジションの損失によって口座全体の証拠金維持率が低下し、利益が出ている別のポジションまで決済される可能性があります。

ロスカットは通常、個別の取引ではなく、口座全体の純資産と必要証拠金をもとに判定されるためです。

ロスカットされても損失額は確定していない

証拠金維持率がロスカット水準に達したとしても、必ずその瞬間の為替レートで決済されるとは限りません。

ロスカットの判定から実際の注文発注、約定までには時間差があります。その間に為替レートが動くと、想定より不利な価格で決済されることがあります。

特に注意が必要なのは、次のような場面です。

  • 重要な経済指標の発表直後
  • 中央銀行の政策金利発表時
  • 政治・地政学上の重大なニュースが発生したとき
  • 週明けに窓を開けて取引が始まったとき
  • 市場参加者が少なく流動性が低い時間帯
  • スプレッドが急激に拡大したとき

金融先物取引業協会も、ロスカットの判定価格と実際の決済価格が異なる場合があり、急激な相場変動やスプレッド拡大によって、預けた証拠金以上の損失が発生する可能性があると説明しています。

したがって、ロスカットがあるから損失は必ず入金額の範囲内に収まる、とは限りません。

海外FXのゼロカットとロスカット

一部の海外FX業者は、口座残高を超える損失が発生した場合に、マイナス残高をゼロへ戻す「ゼロカット」を掲げています。

ただし、ゼロカットとロスカットは別の仕組みです。

ロスカットは、証拠金維持率が一定水準まで低下したときにポジションを強制決済する仕組みです。

ゼロカットは、急変動などによってロスカットが間に合わず、口座残高がマイナスになった後の処理に関するルールです。

ゼロカットを掲げる業者であっても、適用条件、対象口座、禁止取引、処理方法などは業者ごとに異なります。利用前に規約を確認する必要があります。

また、海外でライセンスを取得している業者であっても、日本で金融商品取引業の登録を受けず、日本居住者に対してFX取引を業として提供している場合があります。金融庁は、無登録業者との取引では、トラブルが発生した際の追及が困難になる可能性があるとして注意を呼びかけています。

ロスカットを避けるための基本的な対策

実効レバレッジを低くする

ロスカットを防ぐうえで最も基本的な方法は、口座資金に対して取引数量を小さくすることです。

最大レバレッジまで取引するのではなく、実効レバレッジを低く抑えることで、相場が不利な方向へ動いたときの余力を確保できます。

ロスカットより前に損切り注文を設定する

ロスカットは、本来の損切り方法ではありません。

ロスカット水準へ達する前に逆指値注文を設定し、自分で許容できる損失額の範囲内で決済することが基本です。

ただし、逆指値注文についても、急激な値動きや価格の空白が発生した場合には、指定価格より不利な価格で約定する可能性があります。

余剰証拠金を十分に残す

口座内の資金をすべて必要証拠金として使用すると、少しの値動きでも証拠金維持率が大きく低下します。

新規注文を出せる余力と、相場変動に耐えるための余力は分けて考える必要があります。

「注文できる金額」と「安全に取引できる金額」は同じではありません。

複数ポジションの合計リスクを確認する

複数の通貨ペアを保有していても、同じ方向のリスクを持っている場合があります。

たとえば、米ドル/円の買いとユーロ/円の買いを同時に保有すると、円高によって両方のポジションに損失が発生する可能性があります。

ポジションを分けても、口座全体のリスクが分散されているとは限りません。

重要イベントや週末をまたぐ取引に注意する

経済指標や政策金利の発表前後、選挙、要人発言、地政学上の重大事件などでは、為替レートが急激に変動することがあります。

また、週末に大きなニュースが発生すると、月曜日の開始価格が金曜日の終値から大きく離れることがあります。

注文価格が連続せずに飛んだ場合、損切り注文やロスカットが想定価格で約定しない可能性があります。

取引前に確認するべきロスカット条件

FX口座を開設するときは、少なくとも次の項目を確認する必要があります。

  • ロスカットが執行される証拠金維持率
  • マージンコールや追加証拠金が発生する基準
  • ロスカットの判定頻度
  • 全ポジションが決済されるか、一部決済か
  • 一部決済される場合の順序
  • 必要証拠金の計算方法
  • スプレッド拡大時の評価方法
  • 両建て時の必要証拠金
  • 急変時に証拠金を超える損失が発生する可能性
  • マイナス残高が発生した場合の取り扱い

取引画面に表示される証拠金維持率だけでなく、契約締結前交付書面、取引約款、リスク説明書などを確認することが重要です。

まとめ

FXは、証拠金を担保として、預けた資金よりも大きな金額を取引する証拠金取引です。

少額の資金で取引できる一方、損益は必要証拠金ではなく、実際の取引数量に対して発生します。

ロスカットは、一般的に次の条件で執行されます。

証拠金維持率がFX業者の定めるロスカット水準まで低下したとき

ただし、ロスカット水準、判定方法、決済対象となるポジション、判定から約定までの時間はFX業者によって異なります。

また、急激な相場変動やスプレッドの拡大が起きた場合には、ロスカットが想定より不利な価格で執行され、預けた証拠金を超える損失が発生する可能性もあります。

FX取引を行う際は、最大レバレッジではなく実効レバレッジを確認し、ロスカットに任せるのではなく、あらかじめ許容損失額を決めて損切り注文を設定することが重要です。

※本記事はFXおよび証拠金取引の一般的な仕組みを説明するものであり、特定の金融商品やFX業者の利用を推奨するものではありません。実際の取引条件は各業者の契約締結前交付書面、取引約款および公式情報をご確認ください。

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